私の魂が喜んだ映画

はじめまして。魂を動かされた映画や動画を勢いで書くブログです。

ジャパニーズ鬱映画2本立て。疲労・・・。「母性」「ヴィレッジ」

日本映画を2本。両作ともの鬱度最高です。

なんかあんまり深く考えると引っ張られる系でした。

 

まずは「母性」

戸田恵梨香永野芽郁さんの作品。

「母親から娘へ」と聞くと聞こえがいいかもしれませんが、いいことばっかじゃない。

フロイトも言っているように「女性が女性を育てる」という部分での闇は

「自分の分身であってほしい」

「自分とは違う個体であるということを知った上で自立もしてほしい」

この2面での揺れる心理でしょう。どうやっても両立はしない論理。

 

極端に無償の愛を与えられ「お母さんの言うことを聞いていればずっと娘でいられて守られて幸せ」な母親役を戸田恵梨香さん演じる「ルミ子」。

ルミ子の母親は別に悪人ではないけど敬虔なクリスチャン。大地真央さんが演じています。

とにかく褒めて褒めて伸ばすタイプ。

それが高じてルミ子は母親の言うことが全て正しく、従っていれば間違いありませんよね?となってしまう。

そしてその母親が「素晴らしい絵だわ!素晴らしい人に違いないわ」と褒めた相手から求婚され、まるでアメリカの昔のホームドラマのような「夢のお家」に住み、妊娠。

 

娘であることを卒業する=出産して母親になる

 

このことを一瞬恐れるルミ子を「命をつなげていく素晴らしいこと」と神のような母親に言われて出産するも、その幸せは偶然にも絶望的な母の他界により壊れていくのです。

 

ネタバレします、以下注意です。

 

大地真央さん演じる神母が死んだのはルミ子の娘、永野芽郁ちゃん演じる清佳(さやか)を嵐で倒壊して倒れた家具の下敷きから救うためでした。

全焼した「夢のお家」を失い一家は夫の実家に同居することになり高畑淳子さん演じる姑には疎まれいじめられながらも

「尽くせばきっと・・」と理不尽な姑の暴言にも耐えて生きるルミ子。

娘の清佳は、ルミ子は祖母が死ぬ前から自分など見ていないことも薄々感じていたが、さらに父の実家での同居により自分は母親の愛は受け取れないことを何度も体感します。

白黒つけたい真っ直ぐな性格(遊びがない性格と表されています)のため父親の不倫にも気がつきそのことを問い詰めたことにより自分が祖母を殺してしまう一因となったことをも知ってしまいます。

自分はどう足掻いても、いやもう命を絶つことでしか母の望む娘にはなれないと気がついた清佳は庭の桜の木で首を吊ります。しかし寸でのところでロープが切れ一命を取り留めた清佳。

清佳が死んでしまうかも、そんな時にようやく母性が目覚めたかのようなルミ子。

 

やがて清佳も結婚し妊娠。ルミ子にそれを告げると

「愛能う(あたう)限り大切に育てて」と聖書に書かれているような、でも喜んでくれてはいるのだと思われることを返されます。

清佳は一体どのように「愛能う限り」娘を慈しむのでしょうね。

 

この映画には結論や正しい導きはなく、ああ人間、特に女性が女性を産み育てることが険しいことが多いのだと

そして母性は最初から備わっているわけじゃない、そういう女性ばかりではない。

性神話へ一石を投じる映画なのです。多分。

私は息子がいるんですが娘だったら慈しむことはできなかったかもしれません。正直ルミ子になっている可能性の方が高かった。

おそらくこの映画を見てそう考える人、そして「母性ってなんなの?」って思う人も大勢いると思います。

ハッピーエンドはずっと来ないかもしれない、そんな鬱映画、湊かなえさん原作です。

 

もう1本。これも日本のダークサイドを覗いてしまう「ヴィレッジ」

横浜流星さんが主演、今をときめく(?)一ノ瀬ワタルさんの悪童ぷりも見事な「村社会」の嫌な部分見せつけてやる映画。

 

とある山奥の村、そこは過疎も進み「薪能」が伝統芸能として残ってはいるがどんどんと寂れていき閉鎖度は増す一方の「霞門村(かもん村)」。

現在は廃棄物処理場を稼働させることで村の維持をしているがその裏では埋め立てるのは正規のゴミだけではなく不法投棄(この映画では感染症の廃棄物となっていた)を夜間にトラックで運び埋め立てている。

その汚れ仕事を引き受けるのが村長の息子・透(一ノ瀬ワタル)。

処理場で働くが過去に父親が犯罪者となったことで虐めを受け続け、母親は病んでしまいパチンカスで借金まみれ。透にも殴られ蹴られ、それに耐えながら鬱屈した毎日を漫然と過ごす優(ゆう)。

ある日、幼馴染で子供の頃、優の父親、村長の息子・光吉(中村獅童)と4人で一緒に能を習っていた美咲(黒木華)が東京の生活に馴染めず帰郷。優と美咲は恋愛関係になる。

美咲が帰ってきたことをきっかけに優は徐々に認められ、処理場の広報を任されTVへの出演もするようになる。明るさを取り戻したかに見えたそんな毎日に、再び苦難が戻ってくるのであった。

 

以下ネタバレします。

 

美咲が戻ってきて、優が村に認められたかのように見えた束の間の「邯鄲の枕」のようなとき。

美咲はまるで「羽衣」のように幸せを運んでくれたと思いきや、実は彼女をきっかけに村長の息子・透との関係が悪化し遂には透が美咲をレイプしようとしたため死亡させてしまう(と言っても美咲がハサミで刺したんですが)。

その遺体を不法廃棄物と共に埋め立て隠したのだが、不法投棄を美咲の弟(おそらくア発達障害があるのかな?)に告発され警察の捜査を受けてさらに殺人事件までも発覚していく。

 

「邯鄲の枕」のように一時、世間の脚光を浴び観光客が押し寄せるという「光」の場面が過ぎてしまうと人々は誰も寄り付かない。

さらには不法投棄については優に、透の失踪(殺害)については美咲に押し付けて難を逃れようとする村長。

優も透失踪の件で美咲の弟に嘘の証言をさせようとはするが、嫌がる弟を乗せた車で自動車事故を起こし、

弟に怪我をさせたことで汚いものに染まってしまった自分を責め、

全てのかたをつけようと村長の家に行くも、なんと村長から自分の父親も実は10年前に起こった別の事件の罪(何かは描かれず)をなすりつけられ「処理場建設反対派」だったからということで村長の兄殺しまでも押し付けられていたことすら匂わされてしまう。

 

そんな話を聞き、思いあまった優は村長を締め殺し、家に火をつけ全てを灰にして村長宅を後にする。

優の父親のこと、そして優にも目をかけていた村長の弟の光吉が去ろうとする優に声をかけると優は涙を流しながら笑うのだった・・まるで能の面をかぶったかのように・・・。

 

まずは横浜流星君がただのイケメン・アクション俳優を超えてきたのが1番言いたいことかなー。すごいです、猫背で暗い眼をし、母親に金を無心され、さらに母親の借金が増えた時の地味な爆発!

そして美咲の弟・恵一を自分の保身のために悪事に巻き込もうとした時に見せた怒り。

どれも「優しいが故に溜め込み、ぶつけようも逃げようもない痛みを抱えた人間」の表現がすごかった!

なんかTVの彼とは別人でした。もっとTVでもこういった役柄もやって欲しいですね。

一ノ瀬ワタルさんと古田新太さんが嫌な親子ってのも「あーそうかも、そうだろう、親子だよね!」なりましたしね・・・。

ストーリー的にはわかりやすすぎて、ちょっと物足りない。

もっと中村獅童さんと優の父親との関係とか見たかったですね、能との絡め方も物足りなかったしね。

 

 

2作品とも鬱で出口の見えない映画ですが映像は大変美しいんで、ちょっと観てもいいかもしれないです。

スッキリはしませんけどね・・・。