私の魂が喜んだ映画

はじめまして。魂を動かされた映画や動画を勢いで書くブログです。

「歩いても歩いても」「死刑にいたる病」

まずは「死刑にいたる病」から。

死に至る病」ではありませんので念のため・・。

 

主演が阿部サダヲさん。連続殺人鬼です。榛村(はいむら)大和。

17歳から18歳の若者を狙い24人をも拷問・死体遺棄したという罪で逮捕・死刑になります。

2面性のある彼は持ち前の人懐っこさで他人の心を操ります。

世間に向けた顔はパン屋さんの優しい主。

 

そしてもう1面がみてる私は声が出ちゃうくらいの残虐性。引きます。それも最初の方からくるからもうね、薄目で見てた。😂

 

彼に操られかける若者を演じるのは岡本健史さん演じる雅也。

榛村は「24人を殺した」とされているけれど1件だけは自分ではない、犯人は別にいると雅也に獄中から助けを求めるかのような手紙を書き、気になってしまった雅也は榛村と面会を重ねます。

雅也は実は過去に榛村とは会っており、彼の店にも通っていたし話をしたと記憶にもあるんですが、面会室で会うたびさらに彼に心を奪われていきます。

榛村が冤罪だという1件の殺人事件について謎解きを進めるうちに、徐々に自分には榛村と特別な関係にあったんじゃなかろうかと考え始めるように・・・。

 

マニュピレーターの特徴である「毎回褒めちぎる」ことにより操られ、さらに自分がもしかして榛村の子か??とかまでも思わされてしまうのです。

 

特別に凶悪な殺人犯の息子ではないか、世間的には「関わりたくない」人間としてあつかわれようと「自分は特別な人間」と思いたい雅也の性質をしっかり見ているんです。

自己肯定感の低い人間を選んでいる(被害者や雅也)のは彼らが「自分が何者かでありたいと願っている」からであると見抜いているから・・・。

制服をきちんと着こなして塾やアルバイトに励む真面目な被害者たちは「いい子であろう」と努力していると判断していたようでしたし。

 

榛村のように人を操作するいわゆる「マニュピレーター」が世の中には存在するらしいですが特に榛村は天才的(らしい)、というかそういう風にしか生きられないように育ってきたから。

 

面会のたびに変化する雅也の顔色や言動を見て、また冤罪事件の解明への返答から行動を推測し彼が道ですれ違う人すらも獄中から見ているかのようにジワジワと彼の心を操り独占していくのです。

あちこちに不安や妄想の種を蒔いておき、刈り取る時を待つ。すごい能力です。

雅也はそんな彼に危うく「殺人」をさせられそうになるが・・・という話です。

 

結論から言ってしまうと

「死刑にいたる病」というのは「獄中から人を操り殺人を犯させる」ということなのではないでしょうか。榛村がやりたかったこと。

結果的に榛村は勝利しているのではないでしょうかね。

雅也に関しては失敗だったかもしれませんが。

灯里という雅也親密になる女性(中学の同級生と言っていたのと、爪が綺麗?とか聞いたりするし)といいオープニングとエンディングの被害者の爪を桜の花びらのように撒き散らす場面といい。

彼女の存在は蛇足のようにも見えるけれど原作を読んでいない人に敢えてわからせようと??かな??と思えました。

それに獄中からの指示だけでは操る人間も限られてしまいますからね。

原作本とはまたエンディングが違うようなのでこれは私の想像なのですけれど。

でも謎の1件の殺人の謎解きや、雅也の母親の過去が絡んでくるのはとても面白い設定で引き込まれますね。

何より阿部サダヲさんが「人懐っこくてマジ怖い」人物を演じさせたらすごいんですもの。

マルモの掟はどこ言ったー!!?

ってくらい怖いです。目の中に「光がない」虚無目。

マニュピレーターというのは「とても親切」に近寄ってきて持ち上げるだけ持ち上げて、次に来るのは「え??なんで?そんなこと言われないとあかんねん!」的な理不尽なのだそうです。気をつけましょう。はい。

 

 

話変わって。

役所広司さんがカンヌで男優賞を受賞されたので敢えて是枝裕和監督繋がり。

これまた男優賞を取った柳楽優弥さん主演の「誰も知らない」を見てしんどくなった私。

口直し(?)にまた是枝監督の

 

「歩いても歩いても」(是枝裕和監督)

を見ました。こっちは震えましたよ、魂がね!

監督がどうこうというよりもこの映画は樹木希林さんが演じた横山とし子が素晴らしかったんですね。

ほんと、巧い。なんとも言えない、もうこんな女優さんいないでしょうね。

あ、YOUさんも続けて出ていますが、今度は「誰も知らない」の毒母では決してなくて、実家に帰ると図々しくなってしまう娘役です。

 

この映画あまり有名ではないかもしれないですがそれぞれの登場人物に少しずつ自分の気持ちが乗っちゃいます。

どの人にも共感して「あああ・・」ってなるんです。

優しさ、人間の狡さ、怖さ、ユニークさ、チャーミングさ。

もしかしたら若い人には面白味は薄い映画かもしれません。

親が徐々に老いてきて、自分も煮詰まってきた年頃、50代から60代くらいの方、響きます。オススメしたい映画です。

 

怖い、気持ちの持っていきどころのない悲しい鬱映画の後、これいいですよ。

人間ってやっぱり可愛いなってちょっと安心します。